外資系企業の設立
ここでは主に、外国にある法人が日本に進出して会社や営業所等を立ち上げる際の一般的な情報を説明します。
進出形態の選択
一般的な進出形態として、下記の4つの選択肢があります。
- 子会社の設立(株式会社・合同会社)
- 日本における営業所(いわゆる支店)
- 駐在員事務所
子会社(Subsidiary)
株式会社と合同会社の違いは、会社の設立の項で詳しく説明していますので、そちらを参照してください。
許認可が必要な外資系企業の日本進出は、色々と行うべき手続きが多く、複雑になりがちで注意が必要です。
子会社の他進出形態と比較した特徴は下記のとおりです。
- 親会社とは独立した法人格
- 出資した資本金の範囲内で有限責任
- 他の進出形態と比べると社会的信用力が高い
- 銀行口座が作りやすい
- 役員の全員が海外在住でも可
- 一般に役員や従業員のビザも他の進出形態よりも取得しやすい
- 課税関係が支店よりも単純
- 会社設立の登記が必要
特にアメリカ系の会社ですと、LLCになじみがあるせいか合同会社を選択される会社も多いです。ただ、信用力は株式会社の方が一般的には高く、外資系企業ですと、なおのこと初期の信用がスムーズなビジネスを進行させる上で重要となることもありますので慎重な検討が必要です。
役員全員が海外在住の外国人でも会社の設立はできるのですが、銀行とコネクションがないと口座が開設できないことが多いです。日本で当初から従業員を雇用するようなケースでは開設できることもあります。
日本における営業所(外国会社)(Branch)
外国の会社が継続して取引を行うためには、外国会社の登記をしなければならないこととされています(会社法818条)。この外国会社の登記、というとこの日本における営業所(支店)を意味します。
- 親会社と同一法人格
- 日本支店の債権者に対して外国法人が無限責任を負う
- 少なくとも日本における代表者の一人は日本に居住している必要がある
- 信用力は子会社よりも低い
- 不動産の賃貸は支店名義で可能
- 銀行口座が開設できることになっているが開設できないことも多い
- 課税関係は租税条約などの適用により子会社よりも複雑
- 外国会社の登記が必要
外国会社の日本における代表者は、「外国会社の日本における業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有すること」(会社法817条)になっています。また、会社の取締役等の役員であれば、任務懈怠責任があり、会社に対して責任を負わなければならない場合が会社法上法定されていたり(会社法423条)、競業避止義務、利益相反取引の制限(会社法356条)など各種の規制がかかっていますが、日本における代表者の場合には、この責任が少なくとも会社法上は定められていません。むしろ、「外国会社は、その日本における代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」(会社法817条)とすらされていて、少なくとも会社法上の責任は軽いです。ここは、民法における一般原則や国際私法や外国法の適用などで問題があった場合は解決するものと考えられます。
日本に進出する際に、漠然と日本で支店を作りたいと考えて問い合わせをいただくことも多いのですが、海外で行っていたビジネス日本でも展開・拡大する目的であれば、子会社の設立を選択する方がメリットが多いことが多いです。逆に言うと、営業所にする理由がそれ以外にあるから選択するという進出形態です。
許認可の要件などによっては、この営業所を選択せざるを得ないケースもあるようです。また、活動実態は駐在員事務所と同じで継続的な取引の予定はないのだけれど、支店名義で不動産を賃貸したいので営業所の登記をする、というようなケースもあります。
法人住民税など、資本金が基準で定まる税金は、親会社の資本金として登記された額を基準として課税されますので、親会社の資本金が高い場合には注意が必要です。
駐在員事務所(Representative office, Rep office)
上記のとおり、日本で継続的に取引する場合には、外国会社の登記をしなければならないので、そこまではやらない場合に選択できる進出形態です。
- 銀行口座の開設や不動産の賃貸はできないので代表者個人の名義で行う
- 登記不要
- 一般にビザの申請などは難易度が高い
- 継続的な取引を行うことはできな
- 駐在員事務所でできる活動は下記のとおり
-
- 市場調査
- 情報収集
- 物品の購入
- 広告宣伝など
手続きの特徴
外資系企業の日本進出に際して、特徴的なことは下記のとおりです。
日本銀行への手続
子会社設立の場合には日本銀行に対する事前届け出や事後報告が必要です。
日本における営業所の場合も必要なことがあります。
特に事前届け出が必要な場合には、届け出漏れで罰則もありますので、事前に該当業種にあたらないかどうかよく確認する必要があります。
外国官憲に認証された公正証書が必要
登記手続きの要件により、多くの場合外国公証人・領事などにより認証などがされた公文書が必要になります。サインについての証明や、公証役場又は法務局が要求する所定の内容を網羅した宣誓供述書が必要となります。
基本的には日本サイドで必要な内容を網羅した書類をドラフトし、外国に送って認証を得た上で、登記手続きで使用します。渉外・国際案件を行っている司法書士や弁護士等にご依頼いただくことをお勧めします。
外資系企業の設立の流れの例
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